暗唱している詩
僕が暗唱している詩が少しあるんだけど
どうにもこうにも検索で出てこないんだよ。
あれ? 読んだの僕だけ?
普通にパクリ行為だと思うんだけどこのネットの海に残しておきたくて置いておきます。あとソースが僕の記憶オンリーだから100%どっか間違ってると思うけど置きます。だってネットに残しておきたいから。
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『生まれた年』寺山修司
肖像画に
まちがって髭をかいてしまった
ので仕方なく
髭をはやすことにした
門番をやとってしまったから
門を作ることにした
一生は
すべてあべこべで
わたしのための
墓穴がうまく掘れしだい
すこし位早くても
死のうと思っている
恋人ができたから
恋をし
海水パンツを買ったから
夏が突然やってきたのだ
と
思うことがある
小学校の頃から
いつもすこしずつ 人より
遅れたものだ
半鐘が鳴りだしたから
あわてて放火したり
包帯があるから
あわてて血を流したり
そして
中年になったから急いで老けて
順応について考察し
ズボン吊りを上げたり下げたり
しているのに
ただひとつ
そんなわたしの不条理は
わたしがかなしんでいるのに
かなしい事が起こらぬことだ
この数年間
わたしはかなしみつづけ
それから耳をすまして
待ってみたが かなしみは
やってこない
かなしみのやつ
挨拶の仕方を忘れたか
と
わたしはふとった腹をなでながら
ありあまる人生を見つめ
観光案内図から
かなしみへ続く小路を
今日も探し
明日も探しているのである